= くとるふのまえがき =

 

このコーナーは愛すべき旧支配者らを萌えマスコット化して行こうというものです。
単に名前と設定だけ流用・・・といった安易な真似はしたくないなあと思い、描写のキーワードなども絡めて絵にしてみました。

以下はクトゥルフ神話に対する自分の解釈論なので興味ある人だけどうぞ。
ラヴクラフティアンとしては己のスタンスを明確にしておくべきと思い、書いた次第です。
読まなくても萌え絵の閲覧には何ら問題ありません。

 


我等が愛すべき老紳士と全てのラヴクラフティアンに捧げる

 

・クトゥルフ神話についての管理人による独断的解釈

 

前世紀の偉大な作家Howerd Phillips Lovecraft(1890〜1937)によって執筆された小説群は、ある共通の背景を持っていた。

 

人間こそが唯一の地球の支配者なのではない
かつてこの星には尋常ならざる多くの存在が覇を争っていた・・・旧支配者たちである
それらは現在、星辰の変動や天変地異により、一時的にかりそめの休眠状態に入っているにすぎない
遠くない未来には再びその姿を現し、人間を含めた地上の全てを薙ぎ払い、支配を取り戻すであろう

 

今では漫画やRPGなどでありふれた設定だが、これが20世紀初頭・・・第一次世界大戦の頃だということを忘れてはならない。
狼男や魔女といった古典的ホラーから、そういった人間性を全く備えない存在を描き出す全く当たらしいホラー。
それは昨今の安易なモンスターパニック、『怪物そのものが恐ろしい』というようなものではない。

『人間の存在や善悪の価値基準など、無限の宇宙の広さ(その象徴である旧支配者ら)からみれば取るに足らないちっぽけなものだ』

宇宙規模の視点。
国も、民族も、宗教も、血縁も、イデオロギーも、愛も、更には己自身すら一蹴され、そんな自己を認識しなくてはならない恐怖。
窮極的なアイデンティティーの喪失。

その絶望こそクトゥルフ神話の真の恐怖であり、そして愉悦である。そう、旧支配者たちは手段にすぎない。
クトゥルフの恐怖とは他者から与えられるものではない。
己自身の内なる場所から発する己自身の恐怖こそ、クトゥルフの恐怖なのだ。

また、HPLの斬新な点はその「作品体系」にある。
多くの作品に共通のキーワード、魔道書ネクロノミコンやアーカムなどの地名、神格等を登場させることで
それらが互いに補完し、直接描かれることの無い背景において、壮大な一つのストーリーを紡ぎだす様にしたのである。
そしてそれは彼個人にとどまらない。友人や弟子らにも積極的に小道具を貸し出し、同じ世界を共有したのだ。
その中には『アヴェロワーニュの詩人』C・A・スミスや『コナン・ザ・グレート』のR・E・ハワードなど著名人が含まれる。
更に彼等によって新たに魔道書や神格が加えられることも多々あり、作品背景は益々広がっていった。
言わば同人誌的な楽屋オチなのだが、それが読者にも楽しめるという史上稀に見る成功例であると言えるだろう。
特にネクロノミコンに至っては『原作者』であるHPLの手を離れ、『世界一有名な実在しない本』として確立している。

しかしその斬新さ故に生前は評価されず、「こんな恐ろしいものは掲載できない」と作品を編集長から叩き返された逸話もある。
結局『一部では有名だがいまいち売れない作家』のまま、この愛すべき老紳士はひっそりと世を去った。
そして死後、状況は一変する。

 

HPLの弟子の一人、オーガスト・ダーレス。
彼は師を再び世に知らしめるべく、出版社「アーカム・ハウス」を設立。HPL作品の再発表や新たな作家の育成に貢献した。
それはいい事だった。それまでは。

彼は、師の残した神話体系を纏め上げ、今に言う「クトゥルー神話体系」を完成させる。
だがそこには『邪悪の旧支配者が善の旧神により封印された』という独自の構図が加えられていた。
神童HPLが5歳で見限りをつけた、キリスト教的善悪二元論を持ち込んでしまったのである。

HPLの神話には、善悪などない。純粋に圧倒的な存在による恐怖があり、それこそがクトゥルフ神話だった。
だが、ダーレスは違う。これは最早単なるSFモンスターパニックであり、陳腐なRPG的勧善懲悪劇に過ぎない。
しかも最悪なことには、
ダーレスはこの『善と悪』の構図をあたかもHPL自身が述べたかのように捏造したのである。
確かにこの明快な救い、ヒロイックな要素の入る余地を作ったことでクトゥルー神話は認知度を広めることになった。
だが、最早それは師の目指した方向性ではない。師を元にダーレスが作り上げた、ダーレスによる神話体系である。
かつてHPLは『(ダーレスは)コズミックホラーを解していない』と述べたという。
皮肉なことに、その愚弟によってHPLの名は世界に不動のものとなったのである。
ダーレスによって捏造され歪曲された、虚構の『HPL』の名は。

一応フォローしておくと、ダーレス自身はホラー系以外の作品(ミステリー等)が本職であり、そちらはなかなか悪くない。
不思議なことに、クトゥルー神話になると途端に駄作ばかりになってしまうのである。
『異次元の影』など、あまりにも劣悪な師のコピー作品が多く嫌悪を通り越し呆れ果ててしまう程である。
師を強く想う故に、情熱ばかりが先走ってしまったのだろう。
また捏造こそあれ、HPLを心から敬愛し、その発展を願い、誰よりも尽力したのもまた事実である。
あのC・ウィルソンをこちらに引きずり込んだ事も大きな功績であったと言える。
良くも悪くも、ダーレスこそHPLの最大の貢献者なのだ。

現在ではHPL研究も進んでおり「HPL作品群≠クトゥルー神話」であることはようやく公然の事実となった。
HPL原神話に傾倒し、よりそちらに近い作品を発表する作家も増えてきている・・・というかダーレス派自体が少ないが。
日本でも女神転生を始め、ゲームや漫画・特撮にアニメにと、ありとあらゆるメディアにクトゥルフ神話は浸透している。
どうにもエロゲーの方に根強いニーズがあるのが、嬉しいような悲しいような・・・

 

ということで、当HPでは以下のように呼称を分類している。個人的な分類ゆえ公には通じないのでご注意。

 

『原神話』・・・HPL自身の作品を唯一の正史とするHPL原理主義による世界観(原作に言及されていないものは一切排除)
コズミックホラー、HPL神話、宇宙恐怖神話体系などの表現もこれに含まれる

『クトゥルー神話』・・・ダーレス派を根底とした善悪二元論の世界観(旧神含む)

『クトゥルフ神話』・・・原神話から個々の作家の解釈によって直接派生した世界観(旧神除く)

なお自分としては原理主義的クトゥルフ神話といった所。

んで。
このコーナーではそんな愛すべき旧支配者らを萌えマスコット化して行こうと。
思いつきで絵本風の一行ポエムみたいなのも付けてみました。
悪趣味B級画描きでは所詮出来も知れてますが、それなりにやってみようと思ってます。ほんわかしてくだせい。

 

駄文はこれで終了。
長々と乱筆乱文、失礼致しました。

貴方のHPL作品エンジョイに少しでも役立てば幸いです。

 

2003.07.  ぽに。拝