「ナコト写本」
(概要)
氷河期以前に書かれ、人類発祥以前の記録が残されている写本で、ネクロノミコンに先立つHPL製の最初の虚構文書。
どうやら太古の歴史書というだけで、ネクロノミコンやエイボンの書等のように明らかな魔術知識を含むという訳ではないようだ。
HPL書簡を始め小説内においてもエルトダウン・シャーズとの共通点が指摘されており、おそらくオリジナル・ナコトは
エルトダウン・シャーズではないかと思われる。

『ポラリス』:1918
・天界の伝説が記されているという。ロマール国がイヌート族に侵略されつつある頃、サーキス高原にある
 大理石の都オラトエーの町の文人歩哨が同書を研究していたという。
『蕃神』:1921
・賢人バルザイが通じていたという魔道書。
極寒のロマールよりもたらされた蒼古たる魔道書で、世界が若かりし頃にハンスがハテグ=クラの頂に上り、
ものいわぬ氷と岩以外何も見出さなかったという。また賢人バルザイが蕃神の裁きを受けて後、その頂上の岩には
同書の甚だ恐ろしい箇所にある尋常ならざる印が刻まれているという。
『未知なるカダスを夢に求めて』:1926〜27
・最後の一冊が、スカイ川を越えたウルタールに収蔵されており、それは神々について多くを著している。
・レンに通じる町インクアノクに住むものは神官であるなしに関らず、ナコト写本よりも古い巻物に明らかにされているような
 大いなる物どもの律動をまもるに忠実であるという。彼等は地球の温厚なる神々の遥かな子孫であるからだろう。

『闇に囁くもの』(プナトニック写本:大西尹明訳):1930
・仮面エイクリーの会話、ネクロノミコンと共にツァトゥグアへの記述
 これらの書類保管はアトランティスの高僧クラーカシュ・トンによる
『狂気の山脈にて』:1931
・古きものの時代が更新世以前であるとほのめかしており、人類誕生以前の記録がされている。
・凍てつく荒野カダスについても言及がある
『時間からの影』:1934〜35
・大いなる種族による未来の知識が明らかに伝わったという直接具体的な記録の一つであるという。
 現在はマサチューセッツ州アーカムのミスカトニック大学付属図書館、ロード・アイランド州プロヴィデンスのシャリエール博士の蔵書、
 同州プロヴィデンスのフィデラル・ヒルの教会、地球の幻夢郷ウルタールの寺院の四箇所に一部ずつ存在する。
『闇をさまようもの』:1935
・1935年にブレイクがフィデラル・ヒルの放棄されたO∵S∵W∵教会へ侵入した際、書棚に収蔵してあった魔道書の一つ。

 

「ナスの谷」 著:ロバート・ブレイク
『闇をさまようもの』:1935
・ブレイクが1934〜35年の冬に完成させた、自作の中で最も世に知られた短編小説五編のうちの一つ。

 

「ニコライ・レーリヒの絵画」(絵画) *実在
(概要)
レーリヒは実在する画家で、この絵画も同様。恐らく下記でHPLが指していたであろう作品、「チベット」:1993、「彼方より」:1936の2作品が
『新訂 クトゥルー神話辞典』(学研M文庫)に収録されている。
『狂気の山脈にて』:1931
・ダイアー教授が南極調査の際に「レーリヒの異様で心騒がせられるアジアの風景画」を思い起こしている。

 

「ネクロノミコン」 著:アブドゥル・アルハザード
(概要)
最早説明不要の"世界一有名な実在しない書"。その認知度は創造者HPLの名すら遥かに凌駕していると言っても間違いない。
730年頃、ダマスカスにてアブドゥル・アルハザードにより『アル・アジフ』(アラビア語版原書)として書かれた。
アルハザードはその夢によってこれを書いたとされ、旧支配者や太古の魔術など忌まわしい知識が凝縮された魔道書である。
950年、テオドラス・フィレタスによってギリシア語訳され『ネクロノミコン』の名が冠される。
1050年に焚書とされるも、1228年にオラウス・ウォルミウスによりギリシア語からラテン語に翻訳されており、これが一般的な
「ラテン語版ネクロノミコン」と認知されているものであると思われる。後にこれも焚書とされるも、ドイツ語版、スペイン語版など
数多くの翻訳がなされた。多くの場合は図書館で閲覧禁止にされているか、収集家や狂信者の書架に収蔵されている。
だが後年、間違いだらけ・削除だらけの劣悪な翻訳版も多数刊行されており、ネクロノミコンの名だけで容易に判断はできない。
なお日本では「死者の書」・「死霊秘法」など題名に複数の翻訳が存在するが、見た目的に似たような雰囲気なのですぐ解るだろう。
『無名都市』:1921
・アルハザードは無名都市を夢に見た翌日「そは永久に〜」の謎めいた二行連句を謳ったという。
 但しここではアルハザードの連句のみの言及にとどまり、ネクロノミコンやアル・アジフの名は出ず、その暗示もない。
 本来「そは永久に〜」の部分はクトゥルフではなく無名都市の匍匐種族のことを指しているのか?
 或いはこれが下記『クトゥルフの呼び声』で語られる"論議のある二通りの解釈"なのかもしれない。
『魔犬』:1922
・オランダの教会墓地に埋葬されていた墓荒らしの男の遺体に下げられていた魔よけについて言及があり、これは中央アジアに位置する
 接近不能なレンにおける、屍食宗派の恐るべき霊魂の象徴で、死者を悩ませしゃぶりつくす者たちの霊魂の、何かおぼめく超自然的な
 顕現を基にしているのだという。
・一般的に、この小説で初めて「ネクロノミコン」の名が登場することになった、とされている。
『魔宴』:1923
・キングスポートのある家に収蔵されていた古書の一冊。ここではオラウス・ウォルミウスのラテン語版。
『クトゥルフの呼び声』:1926
・ルグラース警部によるカストロ老人の話、「不死の中国人から教わった、二通りの解釈で論議があるネクロノミコンの一句」として
 「そは永久に〜」の連句が一度上げられるのみ。実は『クトゥルフの呼び声』の中ではあまり重要に扱われてはいないのだ。

『闇の一族』:1926? (断章)
・ロンドンのクレア・マーケットのごみごみした一郭にあるユダヤ人の店で、ウィリアムズ青年が購入した。
 真鍮の留め金が付き、かさ高い皮表紙が人目につく割には、嘘のような安価だったという。
 読みづらい髭文字(ブラック・レター)、卑俗なラテン語で書かれており難解であるという。
『ネクロノミコンの歴史』:1927
・同書の誕生と変遷が纏められている。チェンバースの「黄衣の王」は同書にインスパイアされたのでは、としている。
『ダニッチの怪』:1928
・1917年に、ウィルバー・ウェイトリィが同書の閲覧を求めてミスカトニック大学付属図書館を訪れた。
 ここに収蔵されているのは17世紀にスペインで刊行されたオラウス・ウォルミウスによるラテン語版である。
・ウェイトリーは祖父から遺言で譲られた"貴重とはいえ不完全なジョン・ディー博士による英訳版"を携えており
 751ページにラテン語版で補完されるべき欠陥があるという。
・同書の内容に関して、『ダニッチの怪』では初めて具体的かつ大規模な引用がされている。

『闇に囁くもの』(死霊秘法:大西尹明訳):1930
・エイクリーの手紙内でクトゥルフ、ヨグ=ソトースへの言及が記載されている。
・仮面エイクリーの会話、ナコト写本と共にツァトゥグアに関する記述があるらしい。
 これらの書類保管はアトランティスの高僧クラーカシュ・トンである。
・「アザトース」の名で慈悲深くも隠した、あの角のある空間の向こうの物凄い原子核の混沌世界・・・という言及あり。
『狂気の山脈にて』:1931
・ダイアー教授が南極の風景から「ネクロノミコンに繰り返し現れる、邪悪な伝説の付きまとうレン平原」へ言及している。
 アルハザードはレン平原について、論じることも渋ったという。
 なお調査隊のうちダイアー教授とピーバティ教授は同書を既に読んでいる。
・古きものに関する恐怖もあらわな記述が同書に存在する。
・ショゴスについても言及しているが、地球上に存在したことはなく、麻薬服用者の悪夢以外に存在しないとしている。
『魔女の家の夢』:1932
・ミスカトニック大学の学生ウォルター・ギルマンが閲覧した奇書の一冊で、空間超越に関する自説の手がかりを発見したという。
 また、同書からアザトースの名を知っており、いいようもなく恐ろしい原初の邪悪を示しているという。
・ニャルラトホテプに関しても言及されている。
『戸口にあらわれたもの』:1933
・ミスカトニック大学付属図書館に収蔵されている、禁断の書。エドワード・ダービィが密かに閲覧した。
 また、エフレイム老はこの中で精神転換の秘術を学び取ったという。

『銀の鍵の門を越えて』:1933
・ネクロノミコンの章一つがそのまま、銀の鍵の文字を解読した際に意味を成すようにつくられていた。
・<導くもの>ウムル・アト=タウィルについて、困惑するほどに漠然とほのめかしているという。
 だが実際には、彼等の敬意の表し方やその存在の由来など、相当細かいところまで言及しているようである。
 またウムル・アト=タウィルに関する引用もここでなされている。
『時間からの影』:1934〜35
・1908〜13年の間、ミスカトニック大学ピースリー教授の体を借りた大いなる種族が閲覧し、欄外に書き込みをしたという。
 また、大いなる種族、並びに彼等を幇助したある宗派に関して言及があるという。
『闇をさまようもの』:1935
・1935年にブレイクがフィデラル・ヒルの放棄されたO∵S∵W∵教会へ侵入した際、書棚に収蔵してあった魔道書の一つ。
 憎悪される「ネクロノミコン」のラテン語版があったという。

 

「眠りの壁を越えて、及びマージナリア」(実在)
・1939年、アーカムハウス刊行の三つの選集の一つ